なぜ十五夜というのか?中秋の名月とお月見の話

暦と季節

秋はお月見が楽しみな季節ですね。お月見という習慣は古く平安時代から続いていると言われています。

とくに十五夜、中秋の名月といわれる秋のお月見は今でも大切にされている文化。

2023年は9月29日が十五夜にあたり、ちょうど夜18時58分に庚寅(かのえとら)にて満月をむかえます。(ちなみに2022年は9月10日が十五夜にあたり、夜18時59分に満月でした)

この十五夜についてなぜ十五夜というのか?また今年は満月にあたりますが、十五夜が満月とならない場合もある理由など、旧暦と新暦の違いからお話しいたします。

なぜ十五夜というの?

十五夜は平安時代に中国から伝来してきた秋の収穫を願って祀る行事「中秋祭」がその起源であると言われています。いまでも中国では「中秋節」といって、国民の祝日にもなっています。

その十五夜の起源である中秋節は8月15日と決まっています。ただしこの日付は旧暦上でのこと。現在、みなさんがお使いの新暦(グレゴリオ暦)とは約1か月ほどのズレがあり、2022年の今年は9月10日にあたります。

旧暦で15日と決まっていたので十五夜というわけですね。そしてこの15日ということにも意味があります。

十五夜=満月ではない?

なぜ15日なのか?これには旧暦の暦法(作り方)にその意図があります。

旧暦は新月から次の新月を一か月とする暦法で太陽太陰暦と言われます。太陰とはお月様を指していて、旧暦は月との関係が密接にあるものだったのです。

旧暦では、お月様の満ち欠けで日を決めていました。新月から一か月が始まり、ちょうど一か月の真ん中あたりである15日目がほぼ満月にあたるのです。

実は旧暦8月15日以外も毎月15日目の月のことをは十五夜月として日を数えていました。その中で空気が澄み、特に満月が美しく見える秋の十五夜を中秋の名月として大切にしてきたのです。

中秋とは8月を旧暦ではそう呼び、旧暦8月15日を十五夜・中秋の名月と言ったのわけです。

これはすべて旧暦上でのことであり、現在のカレンダーとは異なります。旧暦と新暦とのズレは約一か月あり、一か月の計算の仕方も異なるため、新暦では毎年十五夜の日付が異なります。

そして旧暦の暦法は自然とのズレも生じることも多々あり、十五夜が満月とは限らずほぼほぼ満月に近くなりますが満月になるとは限りません。

ただ、いまのようにパソコンやITの技術がない平安時代から満月を予測したり、日を数える技術があったことは素晴らしいことだなと感じます。

その背景には月の満ち欠けや太陽の位置などを観測していたわけで、現代人よりも自然と暮らしが密接な関係にあったのかなと思います。

十三夜もお月見を

十五夜は中国から渡った文化ですが、実は日本独自のお月見文化もあります。それが十三夜。これは江戸時代あたりから楽しまれてきたと言われています。

十三夜は十五夜の次に美しい月をみる風習で、旧暦9月13日(十三夜のため13日)を指します。※2023年は10月27日です

江戸時代には「十五夜だけのお月見を片見月」として縁起があまりよろしくないと言われていました。十五夜と十三夜の二つをみて、これからの収穫について感謝し、祈願することで豊作の願いが叶うとされていたのですね。

今年は十五夜、十三夜合わせて楽しんでみてください。

お月見で食べるといいもの

お月見といえばお団子をイメージされるかたが多いでしょう。これは米の収穫を目前に神様にまずお供えをし、お米をいただくことに感謝することを表したため、お米で作ったお団子を準備したと言われています。

そして合わせて飾られるススキは、お米が実る稲と似ているためお団子と合わせたのです。平安時代から続く文化ですが、お団子をたべられたのは貴族たちだけ。

一般の人たちはこの時期に収穫できるお芋(里芋のようなものが多かったそう)を同じくその実りに感謝をしてささげていました。

まず人が食べ物をいただく前に、神前にお供えして祀り、感謝をしてからいただく。実りが当たり前でなかった昔は、食べることは生きることと直結していた証であると感じています。

食べることに苦労しない私たちは、“食”に対してその感謝の気持ちを忘れてしまいそうになります。食べることができること、これは当たり前のことではありませんね。

現代に生きる私たちは、このお月見の風習で、あたらめて“食”に対して「いただきます」の気持ちを大切にしていけたらよいなと感じています。

お団子もお芋もご自身でおいしく食べられる分を、そしてできれば旬の食材を取り入れて恵みをいただいてみてくださいね。