土用という考え方があります。いまでは雑節という季節行事に振り分けられることがほとんどで、しかも土用といえば夏、うなぎをたべることをイメージされるかたが多いと思います。
旧暦で過ごしていた明治以前の日本では土用は季節のひとつとして大切にされてきました。夏の土用だけではなく、春夏秋冬それぞれの季節の間に土用はあり、四季に土用をたした五季として季節をとらえていました。
土用は季節と季節の変わり目にある約18日間。二十四節季の季節で「立」がつく、立春、立夏、立秋、立冬の前の期間があたります。「立」にはスタート、という意味があり、それぞれの季節がはじまるとき。その前18日間を季節の移り変わりとしてとらえるのです。
いまでもよく、“季節の変わり目は風邪をひきやすい”と言われるのはこの土用があらわすとおりです。ひとつの季節が成熟して脱する時、新しい季節を過ごす心と体を整える。昔のひとたちは自然とよくよく調和して過ごしていたのだなと感じます。
土用を知り、感じ、整えると自然と楽に過ごせることがよくあります。今日は春土用にフォーカスし書いていきたいと思います。
春の土用
春の土用は、春から夏への移行期間にあたります。二十四節季の立夏の前約18日間であり、2023年は4月17日(月)15時36分~5月6日(土)3時19分です。土用は毎年少しずつ日時が変化します。これは二十四節季の季節が少しずつずれていくから。ちなみに時間はそんなに深く意識しなくとも、ことしであれば17日から5日までととらえておけばよいでしょう。
春の土用の間日
そんなこんなでたっぷりある土用期間ですが、この期間のうち土用が作用しない、つまり土用がお休みとなる間日があります。この日は日にめぐる干支でそれぞれの土用ごとに決まっていて春土用の間日は「巳の日・午の日・酉の日」です。
2023年の場合は4月17日(巳の日)・4月18日(午の日)・4月21日(酉の日)・4月29日(巳の日)・4月30日(午の日)・5月3日(酉の日)です。2023年は4月17日から土用入りですが早速間日なので4月18日からと意識するとよい塩梅でしょう。
春の土用控えたいこと
先述したとおり、土用は季節と季節の変わり目。土用では土の神様である土公神(どくしん・どこうしん)が季節をゆっくりゆっくり次の季節へ動かしてくださると考えます。そのため私たちはそれに逆らうことはせず、自然を受け入れていくとき。
土を大っぴらに動かすようなこと、たとえば工事などは控えたり、土地にまつわる引っ越しや車を新しくすることなども控えたほうがいいと言われます。また新たな変化や大きくものを動かすことも。とはいえ現代ではこの18日間をずっとお休みすることはできないとも言えますし、どうしても土用にあたることもあると思います。その場合はなるべく間日を選び、そうでなければ土用入りと土用終わりの日を避けることができたらよいでしょう。
なにも土用に動かしたら悪いことが起きる!ということではないので安心してくださいね。自然をうけいれてそのままで過ごす期間を大切にしようということなのです。どうしても心配なかたは土用の前に大方のことを準備を進めておくことをおすすめします。
春の土用整えたいこと
東洋ではこの世に存在するもの、目に見えないものを含めて、すべてを陰と陽のグループにわけて、そして木、火、土、金、水(もっかどうごんすいと読みます)という5つのグループのどこに所属するのか区分する陰陽五行説という考え方があります。
季節もその通りで、土用は土に分類されます。これはもともと土用の名前の由来にもなっていて四季を5つにわけると春は木、夏は火、秋は金、冬は水となり、土にあてはまるものがなく、ここに季節の変わり目を土用としたというわけです。
またこの陰陽五行説で考えると、体内の機能やエネルギーの変化もわかりやすく、季節ごとに起こりやすい不調もよくわかります。特に春の疲れを手放す土用では、春のエネルギーを五行でみると「肝(かん)」に気が集まります。これは肝臓そのものを指しているわけではなく、その働き全体のことで、内側にたまったものを外へ出し、めぐらせていくポンプのような役割。
植物も同じですが、春は新芽がでたり、花が咲いたり、気が外へ上へと発散していくようになります。これは冬、エネルギーを消耗しないよう内側にためていた時期から比較すると180度転換していくタイミングであり、大きな変化があるとき。
そのため春にはゆらぎが感じられたり、ソワソワするのです。そしてエネルギーが一気に流れ込むためそれについていけず体が疲れやすかったり、筋肉がつったりします。
それから春は風がつよく吹き荒れます。春の嵐ともいいますが、陰陽五行説でも風は春と同じ木のグループ。これはそとでふく風により上へ上へのエネルギーを巻き起こすとともに体内にも同じように風がふくと言われます。この風は温度により、位置が異なります。あたたかい風は軽く、冷たい風は重いため、上半身は暑いけれど、下半身は冷たい状態になったり。
春土用では、これらの気を整えていきたいときです。ただ、この不調は季節ごとに出ることが当たり前というか順当ではあるのです。その季節にあった不調であればそれさえも満喫して丁寧にケアしてあげて。(ただその前の季節や、春に秋の不調がまだ残っているとなると浄化不足なのでひとつの季節でおわらせていけたらいいでしょう)
春は巡りを意識して。水をたっぷりのんだり、エネルギーは外へ外へ。軽い運動を始めてみることもよい季節でしょう。寒暖差も大きいので冷やしすぎたり、いきなり日差しを浴びすぎたりは控えて少しずつ体をならしましょう。
春は、ソワソワと同時にイライラとした怒りもでやすかったり、季節に合わせて揺らぎがでやすいとき。時に怒りも必要なエネルギーではありますが、リラックスする時間を丁寧に整えたり、お散歩してみたり。怒りも笑いにかえてみたら最高でしょう。
春の土用になったらしたい
3つのこと
ここからは春の土用に入ったらやってみてほしいことをまとめてみました。土用というとなんとなくどよーんと、いやな感じがするかもしれないのですがそんなことはありません。私はいつも土用が待ち遠しいほど。そんななかで春土用に楽しみにしていることを書き出してみました。
1戌の日に白いもの・“い”がつくものを集めて食卓へ
土用はそれぞれの季節に縁起食というものがあります。春の土用は戌の日に、白いものまたは“い”がつく食べ物を食べると邪気払い、開運に導かれると考えられています。
“い”がつくもの…白いもの…と毎年春土用になるとこの戌の日めざしてスーパーでみつけて献立を組むのが楽しみです。今年2023年は4月22日(土曜日)と5月4日(木曜日)!両方とも土曜日と祝日でお休みのかたも多いかも?しれませんね。
いちご、いか、大根、しらす、お米やうどん、牛乳や豆乳、いわし…たくさんありますが、毎年ベストな献立を考えて飽きないのは私だけでしょうか(笑)和食にかぎらず、様々な組み合わせでおいしくいただきましょう。
2常温をめざしてみる
春の土用は、春にたまった疲れや邪気を手放しスッキリする期間。
とはいえ、少しずつ急激に冷やしてしまうことも禁物。自分自身の体が常温であることを目指して、冷やしすぎず温めすぎずを心掛けています。土用は私の一番いい温度を考えて丁寧に感じるようにしています。手先や足先が冷えていたり、いきなり日差しにさらしすぎたりしないように。飲み物も常温かあ温かいものを飲むようにしています。
また4月、新シーズンの始まりで心に自然と負荷もかかりやすいとき。どうしてもいつもの自分より背伸びをしたり、無理をしてしまったりがあると思います。
そんなときは、春土用に“いつもの自分に戻れる場所”へいくようにしています。昔から好きな場所や人たちと一緒に過ごしたり。心も常温でいられるところへもどして、また春の土用明けからスムーズに進めるように意識して予定を組んでいます。
3ブラックジョークが効いた作品を楽しむ
春は朗らかでいい季節ですが、それと裏腹にドロッとした苦みやえぐみが出やすい時期でもあります。それは自然界でもその通りで、春の野菜は例えばたけのこや菜の花など独特の苦みやえぐみがあります。それが外にでてくるので甘みも際立ちおいしいもの。
私たち人間も同じかな、と感じています。新しい季節、環境が変わったり、変化があるとどうしても誰かと比べてしまったり、心がざわついたり。
そんなときにはブラックジョークが効いた作品をみるようにしています。本だったらエッセイとか、ドラマとか。リアルを描いている作品は、すべてが美しいものばかりではなく人間性があらわれているもの。その考え方や捉え方を知るとなんだか心が軽くなります。
好きな作家さんだったり、脚本家さんだったり、春の土用に立ち戻る作品がいくつかあると楽しいときです。