縁日とは、その場所に祀られた神様とこの世のご縁が一番近くなる日をさします。露店やにぎやかな出店の雰囲気を思い出すかたも少なくないでしょうが、それはあとからついてきたこと。ご縁が近くなる日に集い参拝することで願いや感謝の気持ちが通ずるのでお祭りとなるのです。
その縁日は暦から導かれていたり、一定のリズムでめぐってきています。たまたま神社やお寺にいって縁日だった時もうれしいことですが、せっかくであればこのご縁深まる日を知り、参拝をしたり、考えたりしてみませんか?一年を通し、季節に合わせてご縁日について書いてみたいと思います。
つながるご縁日シリーズのスタートです。
4月8日|花まつり
ご縁日シリーズ、トップバッターは花まつりにしました。一年を通して一番甘いお祭りといっても過言ではない花まつり。今日はこの花まつりについてご縁を深めていきましょう。
花まつりは毎年4月8日とかわりません。これは仏教をひろめたお釈迦様がお生まれになったお誕生日であるため。仏教なので全国のお寺でこの日を祝い、花まつりまたは灌仏会(かんぶつえ)として法要を行います。子どもの健やかなる成長をお祈りし、生きている喜びを感じられるお祭りです。
1花でいっぱいのおまつり
甘いお祭り、と表したのは2つの理由から。ひとつは花まつりという名のごとく、このお祭りはお花でいっぱいになります。お釈迦様がお生まれになったお姿の小さな仏像を、花見堂という花で飾られたお堂に飾ります。
お釈迦様は花園で誕生されたことにより、花をいっぱいにして表現し、色とりどりの美しい花の色彩と香りで仏様を供養するのです。花見堂だけではなく、あちこちを花でかざるところもあります。またこの時期は桜や春の自然な草花が咲き誇る時期でもあり、目にも美しく甘い花の香りあふれるおまつりなのです。
2春が来た、甘茶ふたたび
そしてもうひとつは、この日に振る舞われたり、飲む慣習がある甘茶。お釈迦様誕生の際に、九頭の龍があらわれ天から祝いの甘露をふらしたという言い伝えから甘露のかわりに甘茶をもちいて祝うこととなりました。花見堂に飾られた仏像に、小さな杓子で甘茶を注いで、お祝いします。
灌仏会という名の“灌”には注ぐといういみがあり、この習わしをあらわしています。この甘茶ですがその名のとおり、甘いです。お砂糖が入っているわけではなく、自然の甘味なのですが想像以上に甘く独特のほの苦さも感じられます。
甘茶はほぼこの花まつりでしかいただく機会がないので、その甘さを忘れてしまうのですが一口含むとこれこれ、この甘さ‥とびっくりするほどぐっとくる甘さに思わず笑ってしまうほどです。
3生きる喜び笑い合おう
花見堂に安置される仏様のお姿は、右手を上へ左手を下へ向けています。これはお釈迦さまがお生まれになったときにすぐに立ち上がり、七歩歩いて、右手で天を左手で地を指し「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげ(が)ゆいがどくそん)」と話したというエピソードが基になっているといわれています。
「天上天下唯我独尊」とは、我々人間に差別はなく、皆、平等に尊い命であるということを伝えてくれています。また天上天下とはひろいひろい宇宙のこと。この宇宙に誕生した人々全員がということです。
毎日忙しく過ぎていく日々ですが、生かされているこの命をあらためて考えたいときです。
花が咲くことを、昔の人は“笑う”と表現していました。顔をあわせて、花を愛で、笑い合うという当たり前のことに制限がかかったここ数年。今年から再びこの花まつりで、のびのびとその甘い香りを楽しみ笑い合える喜びを当たり前ではないと、大切にしたいと考えています。