暦本のなかに記載がある十方暮れ。日頃の生活ではなかなか馴染みがないものですがどのような意味があるのでしょうか。またこのときに控えたいこと・行いたいことについてもまとめてみました。
十方暮れとは?
十方暮れとは日に巡る六十干支(ろくじゅうかんし)で決められた10日間のことです。
この期間は陰のこよみとし以下のように様々に考えられています。
・天気が曇りがちで暗雲が立ち込める
・十方(あちこち)の気がふさがる
・途方(十方)に暮れる
総じて物事があまりスムーズにいかなかったり、努力したり行動をおこしても成果が出にくいとされてきました。
十方暮れはいつからあるのか?
1414年、室町時代の陰陽師・賀茂在方(かものあきかた)が書いた暦注の本『暦林問答集(れきりんもんどうしゅう)』など古い暦の参考本には十方暮れについて記載はされていません。
1712年、江戸時代中期に寺島良安より編纂された『和漢三才図会』には“十方闇”として記載があり、1755年、土御門泰邦の具中暦にも記されています。ここから江戸時代にはひろまっていたものと考えられるでしょう。同じく陰の暦である八専のほうが歴史的にみると古い記載が発見されています。
そして現代の暦本のほとんどに十方暮れの記載があります。
算出方法は?
十方暮れは陰陽五行思想から干支をもとに導きだされてきたました。ただ実際の出どころは不明です。
算出方法は日の干支が甲申(きのえさる)の日から癸巳(みずのとみ)の日までの10日間を指します。これはこの期間、日の十干と十二支が相剋(そうこく)するため凶と考えるからです。
ただし丙戌(ひのえいぬ)の日と戊丑(つちのえうし)の日は相剋にはなりませんが、一般的には間日とせず10日間を数えます。
干支で日が決まっているので日付は異なるが周期としては規則正しく巡ってきます。その周期は約2か月に一度となり、同じく陰の暦の8日間である八専と交互に巡ってきます。
控えたいこと・行いたいこと
上記を踏まえて控えたいことと、また行いたいことについて記載してみます。
▶控えたいこと
相談事・旅行・大きな挑戦や外側に結果を求めること・お祝いごと
▶行いたいこと
整理整頓・片付け・読書や趣味に没頭すること・日記を書いてみる・自分自身をケアする
十方暮れは気があちこちに散りやすく、気になったり、不安になりやすいとき。なので自分以外の外側へ結果を求めたり、がんばりすぎても期待値に達しない可能性があります。
反面、気を集める場所をしっかりと定めて一点集中していけば深くふかくその世界へもぐれるタイミング。ここ、というポイントを決めて楽しむ時間にしてみるとよいと思います。
十方暮れをこう考える
外側に結果を求めず、自分自身の内側と向き合う期間と考えたい十方暮れ。ですが2か月に一度10日間もあるので(さらに合間には八専の8日間もあります)すべての日にお休みをしたり、都合よく動くことは難しいかもしれません。
そんな中でも、十方暮れのタイミングを知っているとなんとなく自分自身の心の不安定さであったり、モヤっとする感情を“まぁ、しょうがないか”とゆるすことができるのではないかと思います。
「なにかのせい」にすることはいけないことだ、と教えられることが多い世の中。そんな中でどうしようもできない感情の揺れ動きを飲み込むことができないときは「十方暮れだから」と暦のせいにして楽になってみてください。
きっと優しい10日間になることでしょう。